「これは何だ」

帰ってくるなり、ルルーシュはそう尋ねた。
彼の指差した先には、二体のぬいぐるみがある。

「まあ、チーズ君のぬいぐるみだな」

尋ねられた少女、C.C.は平然と答える。
C.C.は、ルルーシュのワイシャツを1枚着ただけの格好でベッドの上に寝転がっていた。
宅配ピザの箱や、脱ぎ捨てたらしい服も散乱しているが、今は置いておく。

「そんな事は分かっている」

「じゃあ訊くな」

C.C.は鬱陶しげに言う。
彼女の手にはピザがあった。
ルルーシュとの問答をしている暇があるのなら、ピザの方を食べたいらしい。
ルルーシュは、あのな、と溜め息をついた。

「本当に、俺が訊きたいのはそれだけだと思っているのか?」

「思っていない」

表情一つ変えずに彼女は答えた。
ごっくん、とピザを飲み込みながら、

「だが、どうせわざわざ答えてやるような質問でもないだろう」

確かに、返ってくる答えは、ルルーシュにも予想はついていた。
しかし、それでも訊かずにはいられなかった。

「これをどうやって手に入れたんだ?」

「ピザのポイントと交換する以外に何がある?」

C.C.はピザを食べながら、悪びれもせずに言う。
それを見て、やっぱりか、とルルーシュは大きな溜め息をつく。
C.C.とベッドの上のピザの箱とを見ながら

「おまえ、1日に一体幾つ食べているんだ」

「何だお前、もしかしてピザ代が心配なのか?みみっちい奴だな」

くちゃくちゃと口を動かしつつ返事をするC.C.に、ルルーシュはうんざりする。

「そんなに食べてばかりいると太るぞ」

「運動すれば問題ない」

相変わらずのふてぶてしい物言いに、だいぶ苛ついてくる。

「部屋に引き篭もりのお前がか?それに、現に太ってきてるんじゃないか」

C.C.の腹を掴んでみる。むにゅっとした柔らかい感触。

「やっぱりな。ピザは控えたほうがいい」

「……運動すればいいんだろう」

「俺としては、ピザを控えてくれたほうが嬉しいんだが」

金も掛からないしな、と心の中で付け足す。

「生憎だな。私は相手の意見に反抗したくなるタイプなんだ」

「じゃあ運動しろ」

「これまた御生憎様、私がピザを控える訳ないだろう。素直に運動させてもらう」

言いつつ、C.C.は最後のピザを飲み込んだ。
口についた油を袖口で拭う。
それを見たルルーシュは眉を顰める。

「不潔だ」

「何だ、潔癖だな。細かい事を気にする奴は嫌われるぞ」

手についた油も袖で拭いながらC.C.は答える。
改善する気はないらしい。

「着るならもう少し綺麗に着ろ。それは俺のシャツだ」

「じゃあ返す」

そう言うと、C.C.はおもむろにシャツのボタンを外し始めた。

「――それは、俺に洗えという事か?」

「まあそうなるな」

「返すなら洗って返せ」

「残念だな、もう返してしまった」

C.C.は脱ぎ終えたシャツをぽいとルルーシュに投げると、もぞもぞと布団にくるまった。

「さっさと洗いに行ったらどうだ?」

――――なんで俺が!
ルルーシュは叫びたい衝動に駆られた。





 

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