「起きた?」

目を開けると、あまり見慣れない顔がそこにあった。
周りを見ると、自分の部屋でもないし、アジトでもない。
あまり寝起きした記憶のない場所だ。

「聞いてる? ……まだ頭が寝てるのかな」

ああ、今目の前にいるこの人は誰だっけ。
ここは……たしか生徒会室だ。
頭の中がだんだんクリアになっていく。
目の前の人は、たぶん―――…

「――――枢木くん?」

「おはよう、カレンさん」

私はまだ、夢を見ているのかもしれない。
だってまさか、目を覚ましたら枢木くんが目の前にいるなんて。
うん、これは夢だ。夢。
だいたいなんで枢木くんが目の前にいるのよ。意味がわからないじゃない。
そう思ってもう1度目を閉じた。
もう1度目を開ければ、そう、いつもの、私の、部屋に――――

「カレンさん、寝ちゃうの?今寝たら夜になっちゃうけど」

――――え?夜?
がばっと起きて時計を見る。
時計は私の部屋のものじゃなくて、やっぱり生徒会室のものだった。
そうか、これは現実なのか――――と考える余裕もなく、
急いで時刻を確認すると、もう夕方だった。

「うそ………まだお昼過ぎのはずじゃ」

そう、私は昼休みに生徒会長に書類の整理を頼まれて来たんだった。
なのに今は夕方だなんて! そんなに寝てたの、私!?
というか、

「午後の授業は……!?」

「ああ、先生にはちゃんと言っておいたよ。
 『カレンさんは具合が悪くなって寝てます』って」

ああ、よかった。
安堵すると同時に、もう一つの疑問がこみ上げてくる。
シャーリーたちも一緒だったはずなのに、なんで今は枢木くん一人なんだろう。

「他のみんなは、どうしたの?」

「午後の授業があるからって、教室に帰ったよ。
 僕もいったん戻ったんだけど、カレンさんが心配だったから。
 授業が終わったあとに戻ってきたんだ」

思わず顔が赤くなったような気がした。
心配とか、真顔で言われると少し恥ずかしい。
いつもはそんなことないのに。

「あ、ありがとう……」

ああだめだ、枢木くんの顔が見られない。
うつむいたままの私の顔を、枢木くんが心配そうに覗き込んできた。

「どうかしたの、カレンさん?
 もしかして本当に具合が悪くなってきたとか?だったら今から保健室に」

「ち、違うの!あの、じゃ、私、帰るから……!」

慌てて取り繕うみたいに喋ってしまう。
こんな言い方じゃ、余計に心配されちゃうじゃない!
急いで帰ろうとする私を、やっぱり枢木くんは引き止めた。

「本当に大丈夫?倒れちゃったら困るし、途中まで送っていこうか?」

枢木くんと一緒に帰るなんて……!
なんだか恥ずかしいし…………
それに帰り道に何かのはずみで正体がばれたりしたらまずい。
ここは引き下がってもらわないと!

「だ、大丈夫!大丈夫だから――――!」

「でももうすぐ暗くなるし、最近『黒の騎士団』とかいう危ない人たちがいるみたいだし」


――――黒の騎士団。
それは、間違いなく私の属している組織の名前。
やっぱりこういう目で見られてたんだ、私たち。
……枢木くんだけには絶対に正体がばれませんように。